養育費保証サービスとは何か?
養育費保証を利用するメリットの一番の理由は、子どもにとってのメリットかもしれません。
1.保証期間内は子どもの安定した生活の保証につながる
子どもにとって生活の糧である養育費が、間違いなく振り込まれることは子どもの安定した生活につながります。
2.楽しい面会交流につながる可能性があります
父母の養育費の争いに巻き込まれるきっかけになる面会交流でお父さんとお母さんの伝言役になったり、養育費の支払いで争う親の声を聞かなくて済んだりするのも子どもにとってはメリットです。
福岡県では、この養育費保証契約を保証会社と締結する際の本人負担費用(保証料)に対して、補助金を交付しています。市町村にお問合せ下さい。
※福岡市、北九州市にお住まいの方はそれぞれの市で申請ができます。
離婚をする時に、養育費の取り決めをしていても、その後に養育費が支払われないケースは数多くあります。
子どもの養育費をきちんと払ってもらえるか不安な方にとっては養育費をキチンと受け取るサービスがあれば安心です。
養育費保証サービスは養育費の未払いが発生した場合に、保証会社が立替、督促することが主な契約内容約です。
このサービスは、民間の保証会社が養育費支払人の連帯保証人となり、未払いとなった養育費を立て替えて支払い、
養育費の督促を行ってくれるサービスです。
養育費の不払いが起こった場合に確実に受け取れるという大きなメリットがありますが、
デメリットや法的な問題点も指摘されています。
そこで、ご利用を検討される方のために
・サービスの仕組み
・サービスの利用方法
・サービスのデメリットと注意点
について、ご説明します。
養育費を毎月きちんと受け取ることは、離婚後に子どもを育てるために重要なことです。
1.養育費保証サービスとは
養育費保証サービスとは、離婚後に養育費の支払いが止まったような場合に、民間の保証会社が支払人に代わって受取人へ支払ってくれるサービスです。
平成30年頃から始まった新しいサービスですから、サービス内容について知っている人はまだ少ないようです。
そこで、養育費保証サービスとはどのようなサービスなのかご説明します。
このサービスの目的:養育費の不払いに悩むひとり親を支援制度
養育費の不払いが日本では大きな社会問題のひとつになっており行政でもその支援を真剣に考えているところです。
平成28年度厚労省国民生活基礎調査では、ひとり親世帯の貧困率が50.8%と高く、母子世帯では離婚した父親から養育費を受け取っている割合は、24.3%という状況です。
このように、養育費を十分に受け取れていない現状が、ひとり親世帯の貧困の要因のひとつであると考えられています。
こうした中で、民間企業が養育費の不払いに悩むひとり親を支援したいと考え始めたのが養育費保証サービスです。
しかし、「養育費不払い」は大きな社会問題ですから、民間企業の応援だけでは解決できないので公的な制度を導入することが必要です。
そこで法務省と厚労省は、令和2年6月「不払い養育費の確保のための支援に関するタスクフォース」を連携して立ち上げ養育費不払い問題の解消に向けて取り組みを開始しました。
さらに、令和2年1月、法務大臣の下で「養育費勉強会」を設置して、地方自治体や諸外国における養育費履行確保に向けた取組を自治体や研究者などからのヒアリングを実施しています。
地方自治体でも養育費不払い問題は重要な関心事ですので、「ひとり親」を支援するために取り組みを始めた自治体も増えています。
残念ながら一部の自治体にとどまっておりが、この養育費保証サービスを利用するための保証料を補助金で支給を始めたところもあります。
この自治体の補助金制度が導入され、養育費保証サービスの事業者が自治体に働きかけたり、この事業に参入するところも増えているようです。
2.サービスの仕組み
この養育費保証サービスの仕組みは、一言でいうと、養育費の支払いが止まったような場合に、保証会社が支払人の代わりに養育費を立て替えて、その立替えたお金は保証会社が支払人に督促して、回収することになります。
ここで押さえておかなければならない点が、ポイントです。それは、法律的に次の2つの契約を締結しなければならないという事です。
➀養育費の受取人は保証会社と「保証契約」を締結します。
②養育費の支払人は保証会社と「保証委託契約」を締結します。
③養育費の受取人は保証会社と「支払人が養育費を支払わない場合に所定の金額を支払います」という「保証契約」を締結します。
ここで注意しなければならないことは、受取人が支払人に無断でこの契約をすると、保証会社が立替金を支払人から回収できないというリスクが出てくることになります。
そのため、保証会社がこの養育費の支払い義務を保証することを支払人の了解を取りつけることが必要で、併せて立て替え払いをした場合はその金額を償還してもらう約束をするため、支払人は保証会社と保障委託契約を結ぶことになります。
借金をする場合に例えていえば、次のように考えると分かりやすいでしょう。
養育費保証サービスは受取人と保証会社が契約すれば利用できないので、支払人も一緒にこの契約をしなければならないというところが大きなハードルになるということになります。
3.養育費保証サービスの運営は民間会社
養育費の不払いに悩むひとり親は多くいらっしゃいます。現在のところ、支援の運営は、国または地方自治体ではなく民間会社が行っています。
しかし、国・自治体ともに制度導入には、検討段階というのが現状です。
4.自治体が保証料を補助してくれるところもある
自治体の取り組みとしては、養育費の受取人が民間の養育費保証サービスを利用する際に負担する保証料について、補助金を支給するという形でひとり親への支援を行っているところがあります。
保証料の補助を行っている自治体としては、一例ですが以下のところがあります。
福岡県
福岡市
北九州市
東京都
港区
文京区
目黒区
神奈川県
川崎市
静岡県
浜松市
大阪府
大阪市
兵庫県
明石市
兵庫県
神戸市
など
上記以外でも保証料の補助を行う自治体が増える傾向にありますが、まだまだ、自治体の一部にとどまっているのが現状です。
みなさんのお住まいの地域で補助を行っているかお問合せは、市区町村の「子育て支援課」や「子ども家庭課」などにお問い合わせ下さい。
養育費保証サービス利用の3つのポイント
養育費保証サービスを利用するには、押さえてくべきポイントが3つあります。
養育費が不払いになって保証会社に連絡しても立て替え払いをしてくれません。事前にしておくべき準備があります。
➀養育費についての取り決め
第一は、受取人と支払人間で、養育費について取り決めができていなければなりません。
毎月の養育費を支払うという取り決めが必要です。
なぜなら、金額が決まっていないと保証会社は保証できないからです。養育費保証サービスは、取り決めがないのに相当額の養育費を支払ってくれないことに注意しなければなりません。
②サービスの利用には相手方の同意が必要です
養育費保証サービスを利用するには支払人も保証サービス会社と契約することが必要です。
つまり、支払人も養育費保証サービスの利用に同意していることが必要になります。
そもそも、養育費保証サービスの申し込みをする前に、受取人が支払人にサービスを利用することや、支払人は保障委託契約を結ばなければならないことを説明して、同意をもらうことが必要になります。
③保証料の負担者決めておくこと
養育費保証サービスの利用には、保証料が必要です。
保証料の金額は保証会社や保証内容によって若干異なります。参考ですが、大手では。ほぼ以下の様になっているようです。
初回保証料:養育費の1ヶ月分
毎月の保証料:約1,000円
更新保証料:1年ごとに養育費の1ヶ月分×(30%~50%)
*各保証会社により違いがあります。
ご利用予定の保証会社へ、必ずご確認の上利用を検討しましょう。
利用するには受取人が保証会社へ保証料を支払うことになります。この保証料を支払人か受取人のどちらが負担するのか決めておくことになります。
ここは、保証料の金額を養育費に上乗せして決めておくべきですが、養育費交渉が難しい上に、さらに支払人の同意を得ることはさらに難しい可能性があります。
そこで、受取人の方はもよりの自治体で保証料の補助を申請しておくといいでしょう。
3.保証サービスの利用方法
では、養育費保証サービスを利用方法をご説明します。
➀書類の準備
・サービス申し込み必要書類
・養育費の取り決め書面
・本人確認書類
養育費の取り決め書面は、離婚協議書及び合意書、家裁の調停調書・審判書・判決書などで養育費の支払い義務と養育費額が明記された書面です。
なお、離婚協議書や合意書は、公正証書にする必要はありません。公正証書の場合にはそのまま申請に利用できます。
本人確認書類は、運転免許証やパスポートなどです。
②申し込み後は審査を待つ
必要書類を準備し保証会社へ申し込みます。
ほとんどの保証会社は、ホームページから申し込みができます。
申し込みには、支払人の勤務先、勤続年数、収入などが必要なので、事前に必要な情報を確認する必要があります。
申し込み完了後は、保証会社の審査があります。審査は支払人について行われ、受取人ではありません。
養育費保証サービスは、あくまで支払人による養育費の支払いを保証するものです。
審査は、数日かかり終了後に、保証会社から通知があります。
③契約締結
審査に通ると、契約締結手続きになります。
保証会社の指示する契約書を提出し、振込口座の手続きを行います。
④初回保証料の支払い
契約完了後、初回保証料を支払います。
保証会社が初回保証料の入金確認後に保証開始となっているようです。
4.養育費保証サービスの5つの注意点(デメリット)
保証サービスで申し込む前に知っておくべきポイントがあります。
それは、養育費保証サービスには受取人にとってメリットもありますが、その反面デメリット(注意点)もあるからです。
では、サービスの重要な注意点を5つご紹介しますから、申し込み前に確認しておいて下さい。
注意点➀ 支払人に利用の強制はできない
養育費保証サービスは民間のサービスです。この利用を養育費の支払人には強制できないということです。
サービスの利用には手数料も発生しますので、受取人側が利用を希望しても相手方が拒否する可能性もあるということです。
なお、裁判で養育費保証サービスの利用を相手方に強制できません。法律上そのような権利は認められていません。
そこで、養育費保証サービスの利用は、元配偶者とよく話し合い同意を得る必要があります。
注意点② 相手方の事情によっては審査に通らないこともある。養育費保証サービスの利用には、支払人が保証会社による審査を受けなければなりません。
そこで、支払人の収入や家計状況、勤務先などによって審査に通らない可能性もあります。
もしも審査に通らなかった場合には、サービスを受けたくてもできないことになります。
注意点③ 保証料は保証会社によって異なる
養育費保証サービスは、民間の営利事業が行っています。
そこで、養育費保証サービスの利用には、保証料がかかり負担を避けて通れません。
先ほど、保証料の目安をご紹介しましたが、その金額は、平均値であり実際は保証会社によって違いがあります。
ここで注意が必要な事は、養育費保証サービスは新しい事業ですから保証料の適正額は難しいという点にあります。
そのため、業者選定により不当に高い保証料を請求される可能性があることを忘れないようにして頂きたいのです。
これから、養育費保証サービスが普及すれば、保証料の相場も下がり、適正な額も決まってくると考えられますがまだ現状では分からないのです。
養育費保証サービスを検討されるのであれば、多くの保証会社のホームページをチェックして、ご自分で妥当と思われる金額の保証会社を利用することをお進めします。
注意点④ 契約は途中で解除される可能性もある
養育費保証サービスは一般的に期限が決められた契約であることも忘れないでください。
そこで、養育費保証サービスの利用は、必ずしも子が成人するまで養育費を完全に保証するというものではありません。
もしも、保証料を支払わないと、保証契約は解除されることになります。
毎月の保証料は、ほとんどの事業者が1,000円程度にしていますが、更新月はまとまった額が必要になりますから支払いの基準がきちんと決まっている業者もあるでしょう。
さらに、保証額の上限を決めている業者が一般的ですので、保証会社の立替金が一定額になると、強制解約としている業者が多いようです。
そこで、もしも養育費の支払人が思わない病気やリストラなどで職をうしなったような場合には、養育費保証の限界もあるといえます。
また、業者の契約には「免責事由」が設定されるケースもあることを考えると、サービスの利用には契約条項を十分注意して読んでおくべきでしょう。
注意点⑤ 契約前の滞納分は立て替えてもらえない
最後に注意するべきポイントですが、養育費保証サービスは契約してから後の養育費しか保証してくれません。
契約をする前の養育費滞納分は支払ってもらうことはできません。
「養育費保証サービスは養育費が不払いになったら頼めばいい」とお考の方がいらっしゃるならば、誤りだということを知っておかなければなりません。
養育費保証サービスは、「将来の不払いに備えるため」にあるということを考えておくべきだということです。
5.養育費保証サービスは合法?
なんどか説明してきましたが、養育費保証サービスは民間業者が営む新しいサービスです。現行法で対応しきれない部分もあり、今後法的な問題が発生する可能性もあります。
また、契約したあとにその保証会社が事業を取りやめるおそれもないとはいえません。利用する際には注意が必要です。
注意その1
・未払いとなっている養育費を保証の対象にするケース
注意その2
・受取人と保証会社だけで契約が交わされているようなケース
注意その3
・業者が、養育費に関する相手方との交渉や、書面の作成などを請け負う
注意その4
・保証会社が、顧問弁護士や提携弁護士を介してサービスを提供する場合は保証料が高額になる
注意その5
・利用する場合は大手の保証会社を選ぶこと
法律に抵触する業者と契約すると、途中で業者が事業を取りやめ、支払った保証料が無駄になってしまうおそれがあります。そこで、現時点では、養育費保証サービスの利用は大手の保証会社を選ぶ方がいいと思われます。
養育費は、子供の将来のために、よりよい環境を提供するためには欠かせないものです。この養育費の受け取りには、相手方としっかり話し合い、公平な取り決めが重要です。