離婚する時には、押さえておきたい条件があります。
その条件を決められずに離婚すると、気持ちの上でも損をしたり、離婚後に問題が起きたり、新しいスタートを切ったと思ったにもかからず、トラブルになることが多くあります。
中でも、離婚をする際に特に忘れがちな年金分割について分かりやすく解説します。
年金の対象となる期間
まず最初に、年金分割対象となる年金は厚生年金または共済年金だけです。
なお、年金分割の対象期間は、「婚姻していた期間」です。
ですから、年金は、同居していなくても夫の戸籍に入っている以上、年金分割の対象期間となります。
そのため、離婚の話合いをせず長年別居のままですと、対象期間としてカウントされ最終的に双方が受け取る年金額に大きく影響を及ぼすことになります。
年金には請求期間制限があります
離婚した日の翌日から起算して2年を経過すると、年金分割の請求はできなくなります(離婚の裁判が係属中は、期限が延長される)。
しかし、離婚届を出すまでに、必ず年金分割の情報を知ることができるという制度になっていないので注意が必要です。
ですから、市町村役場で離婚届をする際には、注意が必要です。それは、窓口で「年金分割の手続きは済んだか」と聞いてくれません。
知っているか、知らないか、の差は大きいのです。年金分割についてキチンと調べておかないと、大きな損をすることになります。
知らないということは、怖いことなのです。
必ずしも夫が妻に分割するとは限りません
年金分割は、夫から妻に必ずしも分割されるわけではないので注意して下さい。
実は、年金分割の情報通知書の第1号改定者から第2号改定者に分割されると決められています。
つまり、妻が夫よりも収入が多かったり、年金を支払っていた期間が長かった場合には、妻の方が標準報酬総額が多くなり逆に妻から夫に年金を分割することになります。
多様な年金分割のケース
結婚していなくても年金分割ができるケース
内縁関係であった場合でも請求は可能です。(事実上の婚姻関係)
ただし、片方が厚生年金や共済年金に加入し、他方がその被扶養配偶者として第3号被保険者上で認定されることが必要になります。そして、認定された期間だけが分割の対象となります。
単に長くお付き合いしているだけで、同居していないなど、夫婦として外観を有していないケースなどは、年金分割は難しいでしょう。
分割をする人が死亡していても分割請求できます
年金分割は、年金額を分けるのではありません。納付記録を分ける制度です。分割請求後であれば、分割をする人(第1号改定者)が死亡していても影響はないことになります。
よく考えれば、当たり前なことですが、高齢になった妻が夫の死亡により年金の金額が下がったらどうでしょうか。生活に影響しますよね。
年金分割後に再婚するケース
年金分割をした人が再婚をしても、分割された記録は消滅することはありませんので、離婚後に夫が再婚しても、妻が分割によって受ける年金の額に変更はありません。
また、年金分割を受けた妻も再婚で分割された記録が元夫に戻ることもないのです。
受給開始後でも年金の分割はできます
年金の受給が開始している夫婦でも、年金分割は可能です。
ただし、請求をした月の翌月から年金額が変更されるので、受給開始の時点まで遡って年金額は変更されません。
また、受給開始後に結婚した場合は、婚姻後に保険料納付の実績はありませんので分割はできません。
年金分割の資格制限
年金分割を受ける資格は国籍を問いません。
被保険者(国民年金法上の第2号被保険者)の配偶者であった者とされているので、この資格を満たす限りは年金分割を受けることができるのです。
年金分割の手続きは、どのように行うのでしょうか。順番に説明していきます。
1.情報通知書の取得
情報通知書によってご夫婦の年金情報を確認します。
情報通知書とはなんでしょう?
年金分割を考える際には、事前に夫婦の年金の情報を知る必要がありますが、それを情報通知書といいます。情報通知書に記載されている内容は、以下の通りです。
1.ご夫婦の氏名
分割する人(対象期間の標準報酬総額の多い方、第1号改定者といいます)
分割を受ける人(対象期間の標準報酬総額の少ない方、第2号改定者といいます)
2.生年月日
3.基礎年金番号(請求者でない方はアスタリスク)
4.情報提供請求日
5.婚姻期間
6.対象期間標準報酬総額
7.按分割合の範囲(第2号改定者に割り当て可能な範囲)
8.対象期間
情報通知書の請求先
情報通知書はどこに請求すればいいのでしょうか。請求先は下記の通り。
年金の種類
請求先
厚生年金
お近くの日本年金機構
共済年金
所属している、所属していた共済組合・日本年金機構
報通知書の送付先には注意しましょう。
請求者
送付先
離婚前夫婦2人一緒に請求の場合
夫婦2人に送付
離婚前どちらか1人が請求の場合
請求した人のみに送付
離婚後請求の場合
2人それぞれに送付
*離婚前に請求すると相手に知られません。離婚後の生活設計を立てられます。
年金分割後の見込額
年金分割後の見込み額の試算
注:年金分割によって将来もらえる年金額の金額まではわかりません。
理由は、物価や景気、それぞれの年金加入の実績がその時にならないとわからないからです。
アバウトな計算ですが、以下の通りです。
50歳以上
50歳以上の人と障害厚生年金を受けている人は、日本年金機構の窓口で請求すれば見込み額を試算してもらえます。
情報通知書に具体的に見込み額が記載してもらえますので、イメージつきやすいと思います。
50歳未満の人
50歳未満の人は、情報通知書を取得しても、具体的な金額が記載されません。各自で試算することになります(社会保険労務士等に依頼すれば有料ですが計算してもらえます)。
当事者間の合意で請求できます
年金分割請求と按分割合の合意をする
年金分割の請求は、当事者間の話合いで「年金分割の請求をする」「分割する割合(按分割合といいます)」に合意することが必要です。
ただ、一方が減って、他方が増えることになる約束なので、当然に利害が対立し、合意することが難しいことも予想されます。
合意できなかった場合には、家庭裁判所の調停手続き、審判手続き、離婚訴訟(附帯処分)の手続きによって決めることになります。
実は、年金分割についての争いはあまりないので心配はいりません。
実は、3号分割については離婚後どちらか一方の手続きで完了しますし、按分割合も0,5と決まっています。合意分割の部分に関しても、当事者で決められず裁判所で争って審判で決めたとしても、0.5になります。
年金分割の制度が知れ渡ったこともあり、「どうせ払わないといけないなら」と0.5で合意できることも多いようです。
そして、合意は、公正証書や私署証書にする必要があります(注:平成20年4月1日以降の3号分割のみの請求は合意の必要はありません)。
年金分割の請求
年金分割請求
年金分割は、日本年金機構に年金分割の請求書を添付書類と一緒に請求します。離婚、または離婚の条件として公正証書を作成すると自動的に年金分割されるわけではないことに注意が必要です。
具体的な請求方法として、公正証書で年金分割を決めた場合はその公正証書の抄本(年金分割の取り決め部分を抜き取ったもの)や離婚をしたことの記載がある戸籍等を最寄りの年金事務所持参して請求することになります。
(必要書類は、事前に年金事務所や公証役場に問い合わせて下さい。*参照 こちら)
この請求により按分割合で分割するために日本年金機構は「改定割合」を算出し、当事者双方の厚生年金保険料納付記録の書き換えをします。
なお、改定後の厚生年金保険料納付記録(標準報酬改定通知書)は日本年金機構が当事者双方に通知します。
さいごに
年金分割は、離婚後の不平等を解決する画期的な方法としてご存じの方も多いと思います。
残念ながら、厚生労働省のデータでは相手から年金分割をしてもらった人で、年金受給をしている人の受取増加額は、約3万円/月です。
ということは、年金分割をしてもらえばゆとりある老後が保障されるわけではないということです。
離婚後の生活設計を考える上で経済基盤の中心を年金分割に頼るのでなく、その他の方法を考えることが大切で、年金分割での受取増額はあくまで「お小遣い」程度に考えていた方がよいと思われます。
年金分割に留まらず、離婚では決めておかなければならない条件や、事前に知っておかなければならないことがたくさんあります。「離婚」に迷ったときには、まず最初に離婚の専門家へご相談いただければと思います。
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