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相続税の節税対策の注意点
Aさんは、サイトで「不動産を購入すると相続税を効果的に減らせる」に興味を持ちました。
現金よりも不動産は、相続税評価額が低くなるというメリットがあります。土地の場合は約8割、建物の場合は約7割の評価になります。資産に現金が多い場合は、土地建物を購入するだけで相続税を減らせることになります。
業者のサイトでは不動産を賃貸すると、さらに相続税を減らせるとのことでした。賃貸不動産の場合、借地権割合や借家権割合の分、相続税評価額から差し引けるからです。そのため「土地上にアパートを建築して経営すると良い」などという案内が出ていて、不動産会社も紹介されていました。
Aさんは「こんな節税方法があるのか」と考え、父親の相談したのです。賛成した父親と2人で不動産会社に話を聞きに行きました。
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アパート経営の開始と突然の父他界
不動産会社で「おすすめの物件」を紹介されました。不動産会社の話では、不動産の購入やアパート建築は相続税対策に非常に有効と言われ、相続税を減らせるシミュレーションも示されました。
計算上は、相続税額が500万円以上は減ることになるので、Aさん達は「それではアパートを購入しよう」と決意することになったのです。
紹介物件の利回りもそこそこだったので、Aさん親子は勧められた物件で契約しました。アパートの引き渡しも終わり、Aさんの父親はアパート経営を開始しました。もちろんアパートの購入で、父親の現金はほぼなくなりました。
数年後、父親が体調を崩して亡くなりました。85歳でした。
意外と高額になった相続税
Aさんたち相続人は親の葬儀や法要、相続手続きなどに多忙な日々を過ごしていました、一段落して「相続税」を計算して準備を始めました。
相続手続きの開始
1.相続人の構成
Aさん一家の相続人は、子ども2人です。母親はすでに他界。
2.相続財産の内容
相続財産は、実家の不動産と数年前に購入したアパート、少しの預金だけです。
3.相続税額
相続税額は、約500万円。
4.相続税を払えない!
Aさんが調べると、アパートを購入していなければ相続税額は1000万円近くになるところでした。結果として「アパートを購入はいい選択だった」と思いました。
ところが「相続税の支払い」のところで問題が発生。
相続税は現金で一括払いです。しかしAさんたちは、遺産がほとんど不動産で、現金が手元にありませんでした。
Aさん本人は500万円の現金はありません。また、実家は住んでいますので売れません。アパートもすぐに現金化は難しい状況です。Aさんは「アパートを売って相続税を払う」と弟に相談しましたが、弟は「アパートは相続したい」という考えで、売却できませんでした。
Aさんの弟は、「兄は実家をもらい、自分は不動産をもらってない。アパートの権利を共有したい」と考えました。
5.「相続税を払う原資がない」Aさんが選択した方法は
Aさんは父親に高額な現預金がある。相続税が高くなる。相続税対策をネットで調べた。「不動産の購入で相続税を減らせる」「賃貸経営で節税効果もある」と考えた。数年後に父が他界、相続税を払う問題が発生。相続税は「現金一括払い」なのに手元に現金がなかった。
6.延納手続きを選択
Aさんは税務署などと相談し、「延納」を選択。
延納は、相続税を分割払いにすることです。税務署の承認を得て相続税を分割で払うことになりました。しかし、延納は支払期間中の利子税を払い、担保も提供するなどデメリットがあります。
7.相続税の支払いに追われる生活
Aさんは相続税を減らせても相続税の支払いに追われる生活になりました。父親は資産がありましたが、Aさんは収入も低く資産も持っていません。
8.親の現金をそのまま相続して遺産の中から相続税を払えばよかったのです。「節税によって相続税を払えなくなる」という「落とし穴」にはまってしまったことになります。
9.相続税対策には危険がある
Aさんのように相続税対策で落とし穴にはまる人が少なくないのです。
どうすればよかったのか、方法は次の通りです。
10.相続税は現預金で一括払いが原則
Aさんが相続税を払えなかったのは、相続税が現金一括払いだからです。
不動産などの遺産が多いと、相続財産の評価額が高額になって相続税を払えなくなってしまうのです。遺産の大半が不動産の場合、相続人たちは相続税を払えず困ってしまうリスクが高いので、生前の相続税対策が大切です。
11.相続税の支払い期限
相続税は「相続開始後10カ月以内」に現金一括払いです。Aさんのように弟と意見が合わない場合は、調整しての売却は間に合いません。
12.相続税の納税資金を用意すべき
Aさんのように「相続税を払えない状況」にならないための方法はどうすればいいのでしょうか?
13.現預金を残して不動産を購入
➀父が不動産を購入するときに現預金を使ってしまったことが問題です。このときに納税資金として500万円残しておけば、このようなことは起こりませんでした。
➁アパートの一括購入という選択に誤りがありました。節税対策で不動産を購入・建築する場合は、現預金をある残しておくべき。
14.生命保険を活用
➀生命保険を活用することがありました。
父が現預金を使って終身保険に加入し、受取人を子どもたちにしておく。そうすれば、父が死亡したときにAさんたちに現預金が入り、納税資金に充てることができます。
死亡保険金は相続税の控除制度も適用されるので、生命保険の加入で節税対策になります。Aさん親子は、アパートを購入する前に生命保険への加入を検討すべきでした。
「不動産の購入・建築が相続税を節税できる」のは事実です。しかし、思わぬ落とし穴があります。延納は、利子税の分余計に相続税を払わねばなりません。
行き過ぎた傾倒で「本末転倒」にならないよう、十分に注意して節税対策は行いましょう。